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(公財)石川県産業創出支援機構 経営支援部 新事業支援課

れんげやの森:山本 千紗さん

  • センパイ起業家
  • 石川
志を同じくする仲間とともに
中能登に人と活気を呼び込む

れんげやの森

山本 千紗さん

金沢市出身。共働き家庭で育ち、小学生の頃から食事づくりは大の得意。短大で栄養士の資格を取得し、ブライダル業界や飲食店のアルバイトを経て、結婚を機に金沢から中能登町へ。2011年に古民家を改装した食堂&カフェをオープン。地元食材を使った料理・オリジナルケーキが話題を呼び、中能登の名物店に。手狭になったため、2019年4月に現在地に移転リニューアル。近郊にないおしゃれな雰囲気を作り上げ、連日満員の人気店に成長させている。

起業のきっかけ

元々食べることが大好きで、小学生の頃から家で食事づくりの手伝いをするように。高校生の頃からは飲食店でバイトを始め、会社員になってからも夜はバイトを続けるほど、飲食業が肌に合っていましたね。26歳で中能登町在住の夫と結婚してからも、すぐ飲食店で働こうと思っていたんです。ところが当時の中能登町には飲食店がほとんどなく、数か月探してようやく七尾のうどん屋さんの求人を見つけました。働き出すと、讃岐うどんがすごくおいしく遠方からも訪れる人気店。「こんなたくさんの人が集まるうどん屋を、中能登町でもやれたら」と次第に思うようになっていったんです。

働きながら店舗物件を探しましたが、なかなか見つからず、見つかってもまだ20代の私に貸してくれる人はいませんでした。そんな時に知ったのが中能登町の空き家バンク。ちょうど自宅の近くに築100年の物件があり、日本昔話のような雰囲気を一目で気に入ったんです。とはいうものの、かなり傷んでいたので、左官職人の夫に協力してもらい、3か月かけて補修。商工会の小規模事業補助金を活用し、床の貼り替えや壁塗りなどを自分たちでやり、台所もほぼそのまま使用できたので、初期費用も抑えられました。こうして2011年、29歳で念願の自分のお店をオープンできたんです。

開店するとすぐに中能登町の広報で紹介され、老若男女の町の方々がたくさん来てくれました。当時、地元で若い女性が店を開業するのが珍しかったのでしょう。その後も中能登町役場が様々なマスコミに紹介してくださったおかげで、次々と取り上げられ、PRの心配は全くありませんでしたね。当初のメニューは、考えていた通りうどんがメイン。でも、やっていくうちに「この場所で求められているのは、うどんじゃない」と気づいたんです。ハンバーグやオムライス、定食といった、都市部にはあるけど中能登町にはない、ごく普通の食堂のメニューだとわかり、徐々に切り替えていきました。

遠方から来てくださるお客様が増えるにしたがって問題になっていったのが、駐車場不足です。「田舎だからどこでも止めてもいいだろう」と安易に考える人も多く、たくさん苦情が来ました。私も考えが甘かったと反省。町の人の理解が得られるよう、町のPRになるイベントにはほとんど出店するようにしていきました。そうして、町の方たちと仲良くなっていくにつれ、みんなが「中能登町を良くしよう」と懸命に考えていることがわかって、「自分もお世話になった町のために何かできないか」と考えるようになりましたね。

自社の強み

田園風景が広がる長閑な中能登町は、人も温かくて暮らしやすい、大好きな町。メニューに地元の旬の野菜や米を必ず取り入れるようになったのも、「中能登町の良さを発信したい」という思いからです。そして、より多くの人々の集い場になるよう、カフェを強化していきました。常連さんの中から「おいしいケーキを食べたい」という声が多く出て、開店4年目にはパティシエのスタッフに来てもらうことにしました。すると本格的なケーキが食べられると、お客様は倍増。土日は入店できないほど混雑し、ますます駐車場問題が深刻化。真剣に移転を考えるようになっていきました。

物件を探し続けて、3年ほど経った頃、森の中の古民家と出会い「ここだ!」と直感しました。町の中心部から少し離れた350坪の敷地なので、駐車場は十分に確保できます。ここでは、梁だけを残してほぼ全面改装しました。目指したのは、中能登にこれまでなかった「おしゃれなお店」。カフェ食堂にスイーツショップを併設し2店分の厨房を設けたため、信用金庫や日本政策金融公庫から融資を受け、大きなチャレンジになりました。内装工事には夫や義父母が全面的に協力してくれ、本当にありがたかったですね。この家族あっての私だと。「自分が好きなことをやって人生を楽しもう」との思いを共にする夫は、同志であり1番の理解者ですね。


店内のスイーツ店の名物は「ふわこ」。パフェのような具だくさんのシフォンケーキで種類も多い

2019年4月にオープンした新店舗は、テーブル席、庭を望むカウンター席、小上がり席と、誰もがほっとくつろげる空間を意識しました。スタッフも1名から4名に増員。常連客の中から「この人」と思える人を引っ張りました。だから全員価値観が似ていて相性がいい。チームワークの良さには自信がありますね。

今後の展開

これからの「れんげやの森」は、グループ会社として展開していきます。スタッフそれぞれの得意分野を生かし、惣菜、デザイン、パーソナルジムなどの事業を立ち上げる予定です。そして、中能登の魅力を県外に発信する場所として、2021年には大阪にカフェ出店を計画中です。

こうした展開は、さらに大きな最終目標を見据えての準備で、究極の目的は、中能登町の自然や風土を感じながら、人々がつながり合える広大なパークを作ることなんです。森や小川をめぐる散策、田畑で農業体験ができ、カフェやレストランがあって観光客が訪れるだけでなく、病院やショップもあり、地元の人たちが集い働ける生活の場です。つまり新しい“町づくり”ですね。中能登はおそらくこのまま何もしないでいれば、町そのものが存続の危機に見舞われます。手をこまねいているのではなく、地元に住む私たちが実行しようと。勢いのある今、やれることを急ピッチで進めています。

起業する女性へのメッセージ

起業してスタッフを入れると、どうしても「雇う」という感覚になりがちですよね。でも、私はスタッフとは上下ではなく対等な関係でいたいんです。スタッフそれぞれにキャラも得意分野も全然違う。無理に従来の仕事にはめ込むんじゃなく、個性に合わせた仕事をしてもらうと、どんどんイキイキとしてきます。自分の強みをとことん考えさせ、それを尖らせるためのサポートも惜しみません。すると職場の雰囲気が良くなり、アイデアが豊富に生まれ、成果も出てくる。もちろん、自分を知る大切さは経営者も同様です。私の場合は、いろんな人と出会って考え方の違いにふれ、「人のために行動することが快感なんだ」と自分軸を知りました。特に地域貢献が自分の原動力だと気づいてからは、目標がしっかりと定まり、迷いがなくなりました。


休日も一緒に遊び、旅行も年に数回行くほど、仲の良いスタッフ

気負いがなくなったのは、現在のスイーツ部門の責任者の彼女と出会ったことも大きいです。とにかく価値観が似ていて、笑う、泣く、疑問点までも同じ。仕事では、彼女がアイデアを出し、私が実行する。餅つきのようなタイミングで絶妙にかみ合うんです。おかげで、ここまで一気に来ることができました。素晴らしい仲間と出会えれば、仕事だけでなく人生も楽しく充実したものになります。自分を知り、嗅覚を研ぎ澄まして、いい仲間を見つけてほしいですね。

山本さんのある1日の過ごし方

6:30
起床 1日の流れを考える・気になることをネットチェックしてアイデアを練る
8:30
店に出勤 仕込み 朝食
9:00
買い出し
9:30
仕込み
11:00
開店
14:00
休憩 来客対応
19:00
スタッフとおしゃべり
20:00
帰宅 入浴
21:00
就寝
れんげやの森   
https://rengeya.com/