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(公財)石川県産業創出支援機構 経営支援部 新事業支援課

POCHI-エリ。:竹岡 恵理子さん

  • センパイ起業家
  • 石川
百貨店で身に付けた接客経験と人脈を糧に
幼い頃からの夢だった雑貨店を実現

POCHI-エリ。

竹岡 恵理子さん

加賀市出身。高校を卒業後、株式会社大和に就職し、婦人服販売に従事。仕入れから販売に至るさまざまな業務を経験する。21年間の勤務を経て、退職。2010年から県内外のクラフトイベントを通じて、ハンドメイドの子供服・服飾雑貨の販売を始める。その後、次第にリピーターや注文が増え、店舗展開を決断。2017年に店舗をオープンし、現在に至る。

起業のきっかけ

小さい頃から布にふれているとリラックスします。布小物づくりも大好きで、服装デザイン学校へ進むことも考えましたが、接客への興味も捨てがたく、「それなら地元で1番の百貨店に」と「大和」に就職。2~4階のさまざまな婦人服売り場を経験し、素材、柄合せ、パターン、補正などの知識を学びました。何事も突き詰めるタイプなので、お客様の体型、目的、好みなどあらゆるニーズにお応えしたくて、当時全国に30人ほどしかいなかった、フィッティングアドバイザー1級(旧百貨店プロセールス資格)も猛勉強して取得しました。

勤続20年の頃には、「ラルフローレン」の店長、フロアリーダー、課長代行を兼務。忙しくもやりがいを感じていた中、人間ドックで病気が見つかり、2か月間の休養を取ることに。仕事で心は満たされていても、体は限界を訴えていると気づきました。職場はとても楽しく、会社にも慰留されましたが、悩んだあげく退職を選びました。ところが、いざ時間ができてみると、自由を満喫するどころか、自分がいかに接客が好きで働くことが生きがいだったか、ばかりを考えるようになったんです。

「接客が好きなら、得意な物づくりを生かして手作り品を売ってみたら」。元同僚がそう言って見せてくれたのが、雑貨作家イベントのチラシでした。大和時代から、帰宅後や休日に作った小物を周囲の人にあげていた姿を見てくれていたんですね。一刻も早く仕事がしたかった私は、約1か月間でポーチやがま口、クッションカバーなど150個ほどを制作。退職して3か月後の2010年11月、そのイベントで「POCHI-エリ。」としてデビューしました。POCHIは、可愛がってくださった大和のオーダーサロンの方が私につけてくださったニックネーム。残念ながら亡くなられたのですが、天国から見守ってほしいとの思いを込めました。

2日間のイベントには、友人知人、大和の関係者の方々が大勢来店してくださり、商品はほぼ完売。オーダーもたくさん入って、これでやっていける!と手ごたえをつかみました。それからは、北陸・東海のイベントに月5~6回のペースで出店し、だんだんと安定して注文が入るようになっていきました。

「POCHI-エリ。」を始めてみると、小学校の卒業文集に書いた夢が「雑貨屋さん」だったことを思い出しました。大和での仕事が充実していて、すっかり忘れていたんです。でも、なかなか出店には踏み切れず、年月は過ぎていきました。大和時代の経験から、安定した売り上げの継続にはファンをしっかりと築くことが大切、その土台ができるまでは…と心に決めていたからです。

ところが、固定客も増えたのでそろそろ出店を、と思っていても、なかなか踏ん切りがつきません。そんな私を後押ししてくれたのは、大和の元上司でもあるISICOのアドバイザーでした。足を運んでくださったイベントで「このままで満足できるの?」との言葉が、私の負けず嫌い魂に火をつけたんです。その方のアドバイスを受け、出店準備を開始するとまもなく、不動産業を営むお客様から物件の話が舞い込んできました。お世話になっている方のご紹介だから、チャンスに違いない!と物件も見ずに契約。後で見てかなりボロボロで驚きましたが、今となっては神様が決断のきっかけを与えてくれたんだと思います。

大変だったこと

開業資金は、日本政策金融公庫からの融資と自己資金でまかなえ、スムーズに準備できました。ただ、イベントに出店しながら、店の外装・内装を一人で考えて形にしていくのが大変でした。百貨店やブランドの枠組みの中で店舗を改装する経験はあったものの、一からオリジナルなものを作り上げていくとなると、棚や照明の位置、床や壁の素材、色のバランスなど一つ一つ悩み込んでしまって…。結局、全体の改装と商品制作・陳列合わせて、約8か月かかりました。


店内のシーズンコーナー。春は入園・入学、梅雨時は防水アイテムなど毎週展示替えを行う。

ようやく2017年9月にお店をオープンでき、しばらくは順調でしたが、3か月後にやってきたのが、数十年に一度の大雪。お客様は完全に途絶え、運転資金も底をついてしまいました。でも、せっかく開店したばかりなのに、落ち込んではいられません。入学・入園シーズンの繁忙期に備えて商品づくりのチャンス、と気持ちを切り替え、冬の間、制作に励みました。その年の波乱はそれだけでは終わらず、6月には交通事故に遭い、半年間通院することに。この時も、今まで全速力で走ってきたので休めという合図なんだ、と前向きに考えることで、なんとか乗り越えられました。

こうした経験は、お店を出したから大丈夫というわけではない、また、いくら順調でも災害や事故など不可抗力のリスクもあるという、いい教訓になりました。だからコロナ禍でも、それほど動揺はしませんでしたね。元々準備していたホームページを補助金で制作することができましたし、イベントがなくなって店にいることが多くなったおかげで、地元の新規のお客様が増えたんです。どんな大変な状況でも、自分のとらえ方や行動次第で良い方向に変えていける、と今は思っています。

今後の展開

長年の百貨店での経験から、上質なものを求めるお客様のニーズやこだわりは熟知しているつもりです。「POCHI-エリ。」で提供しているのは、高品質な日本製の布を使って丁寧に縫製し、流行にとらわれないデザインで長く使えるもの。そうした商品を色・柄のバリエーション豊かに揃え、お客様の目を楽しませながら陳列しています。

その上で、お客様のご要望に応えたオーダー品にもきめ細やかにご対応しています。体型に合わせたエプロン、入れたいもの専用のバッグ、障害のある方の不便を解消できるアイテムなど、お一人お一人に合わせて作り上げていきます。生み出すまでは大変ですが、商品を手に取ったお客様が「頼んでよかった!」と喜んでくださると、それまでの苦労も吹き飛んでしまいます。お客様とのやり取りの中で商品一つ一つに物語が生まれ、その感動がリピートやご紹介につながって、ここまでやってこれたのだと思います。


お客様からのオーダーによって誕生した商品の一例

今後は対面だけでなくホームページを活用して全国に発信し、ネット販売にも力を入れていきたいです。多くの新しいお客様と出会え、さまざまな物語が紡ぎ出されると思うとワクワクしますね。扱う商品の種類や数も増えていくと私だけでは回らなくなるので、アイロンや発送などのスタッフ雇用も考えています。布や布小物が好きなスタッフさんとよいチームができたらいいですね。

起業する女性へのメッセージ

誰しも経験がないことに挑戦するとなると、「私には無理かも」としり込みしがちなのでは。でも、そこであきらめてしまわないこと。自分一人でできないことは周囲の人たちに協力してもらえばいいんです。私も起業6年目に店舗を持つかどうかで悩み、自分の強みについて真剣に考えたことがあります。その時に気づいたのは、私の周りには長年のお客様、大和時代の上司や一緒に働いた仲間たちなど、たくさんの協力者がいること。それこそが私の財産だと。自分ひとりでやってきたつもりだったけれど、実は周囲の人たちに助けられていたんです。これからもつながりを大切にやっていこう、自分はもう出店しても大丈夫、と心の底から思えて、次のステップへと進むことができました。一生懸命にやっている姿を周囲の人は見ていてくれています。時には人に弱みを見せて協力をお願いすると、快く力になってくれる人は多いと思います。

竹岡さんのある1日の過ごし方

6:30
起床、身じたく、家事など
9:00
仕事内容の確認
10:00
店舗内清掃など開店準備
11:00
開店、接客、製作など
18:00
閉店、レジ閉め・製作・明日の業務の準備など
20:30
帰宅
23:30
就寝