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(公財)石川県産業創出支援機構 経営支援部 新事業支援課

ムッシュー・ジー:ランボ(中川)乃理子さん

  • センパイ起業家
  • 富山
続ける起業のポイントは、
「強み」を見つけ「身の丈」を知ること

ムッシュー・ジー

ランボ(中川)乃理子さん

ニュージーランド、タヒチなど約10年の海外生活後、フランス人でパティシエの夫と富山に移住。
2013年11月、北陸で唯一のマカロン・フランス菓子専門店を開業。
本場フランスの菓子をリアルタイムに感じられる店として、富山に根付かせている。

起業のきっかけ

富山で生まれ、千葉で育ち、ニュージーランドへは語学習得と旅券を扱う国際資格を取るために留学しました。希望していた旅行・観光業への就職は経験がないとなかなか難しく、ニュージーランドでカフェのマネージャーに就いた後、タヒチのボラボラ島のホテルで働いていました。その頃、友人を介して知り合ったのが現在の夫。彼はボラボラ島のホテルでパティシエとして働いていました。フランス人のパティシエはホテルの厨房で重宝がられ、各国に採用ルートがあるんです。「夫と一緒に世界じゅうのホテルを回るのかな」と漠然と考えていたのに、夫の夢はなんと「自分の店を持つこと」。それなら夢をかなえたい! でもいつ始めよう・・・当時夫は28歳、私は30歳。やるなら若いうちのほうがいいのでは、と早速準備を開始したんです。

開店場所としてはフランス・日本・カナダが候補でしたが、子どもを育てるには私の両親のいる富山県がベスト。でも起業の知識も経験もないのに大冒険はできません。有利な条件はないかといろいろと調べて知ったのが、富山県主催の創業塾「未来塾」でした。「志のある人間をサポートしてくれる県なのだな」と思い、未来塾の開校に合わせて帰国することに。期間は6~11月。親元に住みながら、起業の勉強と同時進行で開店準備を進めました。物件探しは、未来塾の先生方や受講生に相談。みなさんワクワクしながら手伝ってくれ、本当にありがたかったですね。

そんな中、最も大変だったのは、商品作りのプロセスでした。夫は「フランスの本物の菓子を富山に伝えたい」と熱心に取り組み始めたのですが、本国で当たり前に手に入る素材が日本では入手できない。また手に入る素材では、作りたいレシピをなかなか再現できなかったんです。業者さんにサンプルをいくつも提供してもらい、限られた資金で何度も試作を重ねました。試作を「甘すぎる」と酷評されることもあり、10年以上のキャリアに誇りを持っていた夫も苦しんでいました。私は見守るだけで何のサポートもしてあげられない・・・辛い日々が続きましたね。正直に感想を言ってくれる身内を頼りに、日本人好みの甘さ、日本人が好むサクッ・しっとりの食感に仕上げていきました。そして日本人好みの抹茶やきなこなどの素材を取り入れ、何度も試食してもらい工夫しながら、なんとか2013年11月の開店にこぎつけたんです。

強みとやりがい

準備し始めた頃はまだお店の明確なビジョンはなく、ぼんやりとフランスの街角にあるような菓子店をイメージしていました。でも「未来塾」では“キラー商品”が絶対必要だといわれました。その店の代名詞「○○といえば●●」と人が噂する、それが繁盛店の条件だと。それが開店時からあるとより有利と教えられました。ではいったい何をキラー商品に? 富山に来て夫が特に気になっていたのは、フランスと味のギャップがありすぎるマカロンでした。調べてみると、北陸にマカロン専門店はありません。これでキラー商品はマカロンに決定です。開店前は「マカロン? パサパサしていて嫌い」とネガティブな声も多かったのですが、来店してみると富山にもフランスの有名パティシエのマカロンファンが多く、そうした方々が「あ、この味だわ!」と口コミでどんどん広めてくださったんです。

また特に広告もせず拡散したのは、メディアのお力添えも大きかったですね。そのツールとしてはプレスリリースを活用しました。タヒチにいる間に富山のテレビ局に「こういうフランス人が富山に行きます」と1回目のお手紙を、富山に来てから「未来塾に通い、こんなコンセプトで開店します」と2回目を送ったんです。すると取材申し込みがあり、半年をかけて取材。開店直前に約30分の番組を放映していただきました。おかげ様でオープンとともに大評判となり、その後半年にわたってテレビ局や新聞社など地元メディアが取り上げてくださったんです。これもキラー商品があったおかげかなと思います。

困ったのは評判になりすぎて、オープン当初は午前中に完売状態になってしまったこと。開店前から行列になり、あっという間に売り切れてしまうんです。遠方から来てくださるお客様が多いのに商品がない、という恐怖の日々が約3か月間続きました。でも当時マカロンは1日300個しか作ることができなかったので、お1人様20個限定の制限をもうけ、スタッフも補充。お菓子のラインナップも生菓子・洋菓子・ジャムと幅広く揃えて、ようやく落ち着きました。商品コントロールの大切さを痛感した時期でしたね。

これからやっていきたいこと

自分自身が海外で学び働いてみて、言葉や就職でとても苦労しました。だからこそ、富山で世界で活躍したい人がいたらサポートしてあげたい。うちの店をステップ台にして、研修した後にフランスへ送り出すしくみを作ろうと考えています。外国の店で働くのはハードルが高いと思っている人は多いと思います。私たちはフランスのお店に人脈があり、採用状況も入ってきます。そうした店に橋渡しをして、向こうで頑張りたい人の扉を開けてあげたいですね。

私も誰も自分を知らない環境で頑張り、ひとつひとつ扉を開けてきました。海外では憧れだった観光業を経験。富山では起業という未知の分野に飛び込み、今お店のプロデュース・マネジメントに専念する日々を送っています。右も左もわからない中で生き残るために必死に学び実践してきましたが、そのプロセスすべてが新鮮で充実した日々でした。もしかしたら、“チャレンジ”そのものが性に合っているのかもしれませんね。

起業する女性へのメッセージ

起業する際には「あれもしたい、これもしたい」と誰もが思いますよね。実際その妄想がないと始まらない(笑)。でも大事なのは「身の丈」だと思います。起業する方の多くが、短期間で廃業したり、本業だけでは成り立たず副業を持ったりと、厳しい現実があります。少しでも長続きさせるためには、最初は大きな投資は避けて、欲張らず「小さく始める」ことです。菓子・パン屋の開業には約1000万の資金が必要といわれますが、うちはそれほど多くの投資はしていません。当初の設備は、一般家庭にあるような冷蔵庫・オーブン・ミキサー、ガスコンロだけでした。見学に来られた同業者から驚かれたほどです。夫は工夫や代用を厭わない人。不要な余剰なものはどんどん省く、ミニマムな考え方を持っています。設備投資は売上に応じて。だからこそお金に振り回されずに働けているのだと思います。

普段は幼い娘の子育てをしながら朝から晩まで目まぐるしく働いていますが、毎年8月は店を締めて5週間フランスにバカンスに行きます。そこでゆっくりと家族の時間を持ち、新しいものを吸収し、ものづくりの芽を育てます。フランス人の大半はこのような習慣を持っています。彼らは「何のために生き、どう働くか」をしっかりと考えている人たちだと思います。これからの日本人もそうなっていくのではないでしょうか。

ランボさんのある 1 日の過ごし方

6:30
起床
7:20
朝食
7:30
保育園へ送迎
7:40
出勤(19時30分まで 陳列、接客、配達など)
20:00
帰宅
20:30
夕食、子どもと遊ぶ
22:00
就寝
ムッシュー・ジー
https://www.monsieurj-patisserie.com/