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(公財)石川県産業創出支援機構 経営支援部 新事業支援課

制服リユース リクル:池下 奈美さん

  • センパイ起業家
  • 石川
「欲しい」と「譲りたい」をつなぐ
制服の輪を広げたい

制服リユース リクル

池下 奈美さん

23歳で結婚し、現在2児の母。子育てしながら、不動産会社、飲食店、パソコン教室などで働く。長男が新調したばかりの制服を何度も破き、困った経験から、2017年に制服リユース店を開業。2018年に現在地に移転し、石川県全域の幼稚園、保育園、小・中・高校、専門学校までの制服、体操服、カバンなどの買取り・販売を行っている。2019年、SDGs(持続可能な開発目標)に合致したリユース・リサイクル・レンタル(3R)の取り組みが評価され、第7回「グッドライフアワード」実行委員会特別賞・エシカル賞を受賞。

起業のきっかけ

結婚・出産を経て事務職や接客業などで働いていましたが、夫の意向もあり、「子どもが学校から帰宅するまで」の時短勤務が主でした。起業を思い立ったのは、中学生になった息子が入学1か月で制服を破いてしまったことから。当時のリサイクルショップでは制服を取り扱っておらず、お下がりを譲ってくれるママ友もいなかったため、新品を買うしかなかったんです。その時、「お下がりの制服を循環できるようなお店や仕組みがあれば助かるのに」と心底思いましたね。私だけじゃなく困っている人がたくさんいるのではと。そこで「なければ私がやるしかない!」との思いで動き始めたんです。

まず、一番大きなハードルが夫でした。「母親としての役割をきちんと果たしてほしい」という考えを強く持っている人なので、起業に賛成してくれるかどうか不安だったんです。ところが、「趣味で制服を集めている人でなく、子どものために本当に必要としている人たちに届くシステムなら」とすんなりGOサイン。「それならば!」と勢いづき、最初は趣味でやっていたネットオークションの形式で運営しようと考えました。かつての勤め先の不動産会社の社長さんが、ネットオークションの代理店をされていたので相談したところ、「ネットで買い手を制限するのは難しい。やはり実店舗が必要」とのアドバイスが。その後、いろいろと物件を検討して行きついたのが「女性専用ホテル」の一角でした。物件探しに難航する私を見かねて、社長さんが賃貸料・光熱費無料で提供してくださったんです。ここならば女性客しか出入りしないし、男性が趣味で買いに来づらいと。その代わり、宿泊者のチェック業務や掃除などを空き時間にしてくれればいいと言ってくださって。開業資金ゼロで突っ走ったので、そのご厚意は本当にありがたかったですね。

制服は友人や親戚などから20着ほど集めました。もっと集まってから開業しようと思っていた矢先、全国でフランチャイズ展開している制服レンタルショップがまもなく開店するとの話を聞きつけ、「マネしたと思われたくない」という一念で、2017年1月にオープン。思い立ってから、約8か月でのスピード起業でした。広告資金がないので、告知手段はフェイスブックでの毎日の近況アップのみ。1月は全くお客様は入らなかったですね。ところが、フェイスブックを見たという新聞社の取材が入り、2月初めに記事が出ると、週末には開店前から行列が…。これには本当に驚きましたね。それからはお客様が口コミしてくださったり、取材が続々と入るなどで、集客には全く困らなくなりました。

大変だったこと

開店した月はやはり制服が足りなくて、提供できるものがほとんどありませんでした。サイズも種類も全然マッチングできなくて、ご来店してくださるお客様に申し訳なく辛かったですね。それが、3月の卒業式、4月の入学式が終わったタイミングで、制服を持ってきてくださるお客様がどっと増えたんです。「商品が集まる時期」をこの時、初めて知りました。制服が集まりだすと、今度はホテルの一角に入り切らなくなって、自宅にも持ち込むようになっていきました。ある日、夫に「こんな制服まみれの生活はしたくない」と言われ、真剣に移転を考え始めるように。手持ち資金が限られていたので、金沢市の補助金やクラウドファンディングなどで調達し、なんとか2018年1月に現店舗に移転することができました。

当初は制服についての情報収集にも苦労しました。学校ごとに違う制服の種類・ルール・価格を1から学んでいったんです。各学校のホームページを見たり、価格をお客様に教えてもらったり、大型スーパーで価格をリサーチして、データを作成。販売価格や買取り価格は「私ならこれくらいだと納得できるかな」という主婦目線で設定しました。利益よりお客様の気持ちを最重要視したかったんです。

求められているものをご提供できて、「助かったわー」との声がいただけると、いつも満足感でいっぱいになります。「手助けできた」という喜びが何よりも大きいですね。自分が困った経験から、お客様の気持ちがすごくよくわかりますから。ネットでなく対面のよさは、その反応がダイレクトに見られるところ。「思い出が詰まった制服を捨てたくないけど置き場に困る」「制服を譲ろうとしてもスムーズにいかないママ友関係」など本音が伺え、コミュニケーションの場になっているのもうれしいですね。

今後の展開

販売している制服には、すべて徹底したメンテナンスを行っています。1点1点のホコリを取り、ほつれを補修し、クリーニングや洗濯ののち販売します。時間も手間もかかる作業ですが「手を抜かない」ことが、信用につながっているのだと思います。

どうしてもやりたいと思っているのは、多店舗展開です。現在は能登や加賀から時間をかけて来てくださっても、求めている制服が必ずあるとは限らない。それがたまらなく申し訳ないんです。営業時間が11~16時までと短く、お子様連れで来店するには不便な時間帯なのも見直したい。スタッフを増やして、ぜひ能登や加賀にも支店を作りたいですね。

集まる制服には、ダメージがあったり、モデルチェンジしてしまって使えなくなったものもたくさんあります。そんな制服もゴミとして扱いたくないという思いから、リメイクバックの制作・販売も始めました。学ランから作る「がくらん」、セーラー服からつくる「せーらん」、スカートからつくる「めくりん」などがあり、思いに共感してくださる方々を中心に売り上げが伸びています。最近は幼稚園や保育園などから「思い出の品をリメイクしたい」といったオーダーが増えているので、ネットからのオーダーシステムも充実させていく予定です。売上金の一部は、困難な環境にいる子供たちに寄り添う団体への寄付金として活用したいと考えています。


セーラー服を生かした「せーらん」は、「可愛い!」とママにも子どもたちにも好評

起業する女性へのメッセージ

まずは、お金をかけずに、借金をせずに、とりあえずやってみること。やってみないとどうなるかわからないことが多いんです。うまくいかなければ、課題を解決できる違う道を探す。またダメなら違う道と、一つの道だけではなく視野を広く持ち、まずは突っ走ってみること。特に私のように「今までにない新しいこと」を始める場合には、誰もやったことがないのだから、誰にもノウハウはわからない。考えて立ち止まっていても前には進めないんです。これは、開業にあたって相談した社長さんのアドバイスから得た教訓です。実際に動きだすと、その言葉が身に染みてわかりました。


2019年12月、環境省の「第7回グッドライフアワード」受賞にあたり、山野市長を表敬訪問

いろいろな方に相談に行き、やりたいことを話し、聞いてもらって意見をもらう。そうすることで、アイディアが増え、道も増えます。そして、一番大切なご縁が広がります。あとは、業種が違っても一緒に高め合える仲間を見つけること。愚痴も報告もなんでも言い合って身も心もすっきりして、また前に進んでいけるような。私には、起業を思い立った時に初めて行ったセミナーで仲良くなった、ウェブデザイナーをしている大切な友人がいます。彼女が、私の想いを具現化するために様々なサポートをしてくれています。1人では何もできません。そうした出会いのチャンスを掴むために、セミナーや交流会に積極的に参加してみるのもいいかもしれませんね。

池下さんのある1日の過ごし方

6:30
起床、朝食やお弁当作り
7:45
家族を送り出し・夕飯の準備・掃除
9:00
事務仕事
10:30
出勤 接客
17:00
帰宅
19:30
夕食・夫と一緒にお酒を飲む
23:00
就寝
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